構築経緯
環境考察
ヨロイ組が解禁され、まずは解禁されたばかりのトノグドラ(ニョロトノ+キングドラ)をお遊び程度に使いたいと思い、適当に組んだトノグドラ+ゴリランダーガオガエンを使ってみたところトゲキッスに蹂躙された。多くの構築に採用されるトゲキッスに弱いのはありえないと判断し、しばらくは別の構築を使って遊んでいた。
1, 2週間ほど環境を見ていたところ、バナコー(フシギバナ+コータス)とバナコーに強そうな組み合わせが多いということを改めて感じた。そこで、バナコーをメタる方針で考えていくことにした。思いついたのはバンギラス+ダイジェットという並びだった。先発にフシギバナより速いダイジェットポケモン+遅めのポケモンを出し、遅めのポケモンを交代しながらバンギラスを出して天候を晴れにさせずにフシギバナの処理を狙うというもの。バナコーの流行により増加しているリザードンに強い点も優秀である。ダイジェットポケモンとしてはリザードン、エースバーン、ギャラドス、ドラパルトあたりを考えた。しかし、先ほど述べたとおり、バナコーだけではなく、バナコーに強そうな組み合わせとして自分と同じようにバンギラス+ダイジェットを採用したプレイヤーも多く、ミラーの発生が避けられなかったり、メタられやすかったりと軸を決めかねていた。
色々と考えた結果、バナコーに比較的強い上に、バナコーメタとして考えられるポケモンたちにも強いキングドラを軸にし、序盤にトノグドラを使ったときの反省を踏まえて構築を練っていくことにした。キングドラは非ダイマックスでも強いポケモンという点で自分の好みでもあった。
雨始動要員の選択
雨始動要員としてはペリッパーかニョロトノ、あまごいを覚えるいたずらごころのポケモンが考えられる。すばやさが変動したそのターンから適用されるという8世代の仕様上、交代しながら天候を取る立ち回りが強いことは砂パや晴れパが証明してきた。そのため、雨始動要員は受け出しがしやすいニョロトノの方がペリッパーより優れていると考えた。また、ニョロトノのてだすけはダイマックスとの相性がよい上、キングドラで盤面を荒らした後のほろびのうたによる終盤の詰めができるところも優秀である。いたずらごころについては、ねこだましで簡単に止められる点や単体性能が低い点から採用には至らなかった。
対トゲキッス
トノグドラまでは決まったので、トゲキッスに強いポケモンを考えていくことにした。トゲキッスはどの構築にも採用されるポケモンであるため、ダイマックス型でも非ダイマックス型でも選出して腐らないポケモンというのが大前提であった。雨下でトゲキッスに安定するはがねタイプの中でも相手のトゲキッスがリリバのみであった場合にも強く立ち回れ、キングドラの苦手なアシレーヌやマリルリにもそこそこ強めなジバコイルを採用した。雨パのトレンドとしてはアーマーガア詰めがあるが、火力がなく、横のポケモンをトゲキッスが殴り続けるだけになるか、アーマーガアとポリゴン2のような高耐久ポケモンを並べてトゲキッスを対処する方法ではトゲキッス入りへの選出が固定化されてしまうという点から、トゲキッスへの遂行速度が速く汎用性もあるはがねタイプであるジバコイルを選択した。
さらにトゲキッスに強くするために、最終的にはパーティから抜けてしまったが、ハッサムを採用していた。こだわりハチマキを持たせることでダイマックスしたトゲキッスにも上から大きなダメージを狙える点や、高火力なとんぼがえりでサイクルを回せる点を評価した。抜けた理由は後述する。
補完
まだトゲキッスとアシレーヌには強くしたいと思い、トゲキッス相手であればキングドラと並べたときにキングドラにダイフェアリーを撃ちにくくしながら仕事ができるバコウのみ持ちのモロバレルを採用した。キノコのほうしによる序盤の荒し、トリックルームの牽制、いかりのこなでの行動保証、さいせいりょくによるサイクルと、パーティとの相性が良い。選出に組み込みやすいという点でも使っていく上でこの構築にはモロバレルが必要だと感じた。
最後の枠にはイエブリ(イエッサン+ブリムオン)に強く、ゴリランダーや晴れパ相手にサイクルを回す上で役立つガオガエンを採用。ナットレイの処理にも役立ち、てっぺき型であればほろびのうたで処理すればよいので相性がよかった。7世代の頃から雨パにはガオガエンを入れていたので絶大な信頼を置いていた。
課題と解決策
ハッサムを入れた状態で対戦を重ねていくと、ある重大な欠陥に気づいた。とつげきチョッキ持ちのフシギバナに勝てないということである。ガオガエンのフレアドライブやハッサムのダブルウイングという打点はあるが、相手の持ち物がわかっていない状態で動かすとねむりごなを撃たれたり、てだすけダイアースを撃たれたりするだけである。何か解決策がないか試行錯誤した結果、こだわりスカーフ持ちのエースバーンに辿り着いた。きあいのタスキでない理由は、フシギバナのきあいのタスキの所持率が下がっており、晴れ下で上を取ることができれば眠らされる心配なく倒すことができるからである。また、トゲキッスはエースバーンに対して初手ダイジェットから入ってきやすいので、こだわりスカーフとリベロのタイプ変化によってアイアンヘッドを2回撃つことができる点も偉い。
ハッサムは出せば活躍してくれていたが、選出率は低くダイマックス権を切るポケモンでもないため、相手はキングドラのダイマックスだけを警戒すればよかった。それに対してエースバーンはダイマックスしても強いポケモンであり、相手の選出や立ち回りを誘導できる点で強力。構築的に面倒なラプラス、ポリゴンZ、バコウのみモロバレルに対してもエースバーンは比較的強く立ち回ることができる。
みずタイプ2匹、ほのおタイプ2匹という異質な構築になった。
個別解説
ニョロトノ
持ち物:オボンのみ
性格:おだやか
努力値:H244 B196 C4 D4 S60
実数値:196-x-120-111-133-98
技構成:ねっとう/ほろびのうた/てだすけ/まもる
特性:あめふらし
B:A194ゴリランダーのフィールドグラススライダー最高乱数以外耐え
D:C161いのちのたまリザードンのダイソウゲン(140)最高乱数以外耐え
S:S+1で最速81族抜き
サイクル回せる雨始動要員。
パーティ全体の火力が乏しいので、味方の火力を上げて残数有利を取るための「てだすけ」、終盤にモロバレルやガオガエンと合わせて詰めるための「ほろびのうた」と「まもる」を採用している。自身の火力がなくても味方の火力を上げたり詰め筋を作れたりするのはペリッパーとは異なるニョロトノの最大の強みだろう。
攻撃技については、当てたときのアドバンテージが大きい「だくりゅう」や「ハイドロポンプ」、S操作技である「こごえるかぜ」と考えたが、命中安定であり、みずタイプとしての役割も確保できる「ねっとう」を選択した。有利対面を作ったときにはゴリランダーが受け出してくることも多く、3割火傷という追加効果が優秀。
持ち物は確定数を変えることができる「オボンのみ」。ピンチベリーは回復量の割に発動条件が厳しく、確定数を変える持ち物というよりはサイクル数を増やす持ち物であると考えているため、てだすけやほろびのうたで盤面に居座ることも多いニョロトノにはオボンのみが最適だと思う。
ほろびのうたを使うならばSを落とした方がよいと考える人もいるかもしれないが、キングドラのダイジェットを使うときには横にニョロトノがいることも多く、ねっとうで攻撃するときにも、裏にモロバレルが残っている場合にほろびのうたを使って退場するときにもSが高いことは役立つ。
キングドラ
持ち物:いのちのたま
性格:ひかえめ
努力値:H228 B12 C196 D20 S52
実数値:179-x-117-154-118-112
技構成:だくりゅう/りゅうせいぐん/ぼうふう/まもる
特性:すいすい
H:10n-1
B:ダイマックス時A189いのちのたまドラパルトのダイドラグーン(130)高乱数耐え(81.3%)
C:11n
D:ダイマックス時C172トゲキッスのダイフェアリー(130)急所を急所率込みで高乱数耐え(81.3%)
S:+1で最速100族抜き
技範囲の広い雨エース。ダイマックス時も強いが、非ダイマックス時でも強い。
技構成はよくあるもので、最高火力のドラゴン技である「りゅうせいぐん」、このゆびとまれやいかりのこなを無視できる強力な範囲技の「だくりゅう」、ダイジェットのベースになり、雨下であれば必中技として使える「ぼうふう」となっている。「ハイドロポンプ」はダイストリームとして使えば威力が140となり強力だが、非ダイマックス時に相手1体対象で命中80という点が弱い。
よくいるCSキングドラと違って、HCベースとかなり耐久に寄せた調整になっている。CSと比較して準速80族を抜けないところは弱いが、CSでもSに補正をかけないとS+1エースバーンは抜けず、おいかぜやダイジェット展開以外では逆にS過多になることも多い。キングドラは雨とダイジェットでSは十分に補えると考え、ドラパルトやトゲキッスの前で強気な行動ができる耐久厚めの調整とした。これによって、キングドラの行動回数が増え、キングドラで削ってほろびのうたで詰めるという選択を行いやすくなった。
実は、次に解説するジバコイルとS実数値が一緒である。構築内に同じSのポケモンがいるというのは相手のポケモンに集中攻撃するときに困ることがあるため、私もあまり好きではない。しかし、キングドラもジバコイルもS+1で最速100族を抜くメリットがあるためSを削ることはできず、キングドラのSを113以上にしようにも耐久も火力もギリギリのラインだったため、同速という選択を取った。雨やダイジェットでキングドラのSが上がっていることも多い上に、いざとなれば50%の同速をすればよい。
ジバコイル
持ち物:じゃくてんほけん
性格:ひかえめ
努力値:C252 D4 S252
実数値:145-x-135-200-111-112
技構成:10まんボルト/ラスターカノン/ボルトチェンジ/まもる
特性:がんじょう
S:+1で最速100族抜き
技構成について、対戦していく上でジバコイルの選出率が高かったので、ほろび詰めの際に役立つ「まもる」は欲しいと感じた。最後の1枠には、S操作技の「エレキネット」、相手に択をしかけられる「サイドチェンジ」、雨下必中で最大火力を出せる「かみなり」といった候補があったが、有利対面で使って盤面を常に有利な状況にする「ボルトチェンジ」を選択した。マリルリ入りのほろびパへの勝率も一気に上がる。
持ち物は「まもる」を使いたいので「こだわりメガネ」や「とつげきチョッキ」を持たせることはできなかった。そこで、がんじょうとの相性がよく、雨下であればほのお技に対して低いリスクで発動できる「じゃくてんほけん」を採用した。しかし、練習時にはじゃくてんほけんが発動することもあったが上手い人はケアしてくるので、でんき技の火力を上げる「じしゃく」や、トゲキッス+モロバレルの並びに強くなる「ぼうじんゴーグル」の方がよかったかもしれない。
耐性が優秀なので受け出ししたいことも多く、調整したらより強いポケモンになると思うが、良い調整が思いつかなかったのでCSに振り切っている。
モロバレル
持ち物:バコウのみ
性格:なまいき
努力値:H236 B36 D236 S個体値0
数値:219-x-95-105-143-31
技構成:ヘドロばくだん/キノコのほうし/いかりのこな/まもる
特性:さいせいりょく
H:3n
B:A189いのちのたまドラパルトの一致130技高乱数耐え(87.5%)
D:11n, C195いのちのたまアシレーヌのダイアイス(140)高乱数耐え(87.5%)(霰ダメ込みは56.3%)
S:最遅
催眠という圧力をかける便利屋。
雨下のバコウのみモロバレルは弱点が少なく、いかりのこなやキノコのほうしで不意のぼうじんゴーグル持ち以外には確実に仕事ができるため先発に出したときの安心感がある。削れても交代すれば特性さいせいりょくで復活してまた仕事ができるので、カプがいない今かなり強いと感じた。
技構成は特に述べることもないが、ほろび詰めやモロバレルの処理を遅らせる「まもる」と、キングドラが苦手なフェアリータイプや、いかりのこなやキノコのほうしを無効化するくさタイプに通る「ヘドロばくだん」を採用している。
構築内にエースバーンとキングドラというダイジェットを使うことで有名なポケモンが2匹もいるため、相手は最速モロバレルを意識して立ち回る必要があったのかもしれないが、耐久を高めて後攻催眠したりサイクルを回したりする方が強いと思っているのでアシレーヌ意識のHDにしている。Sはトリル下でキノコのほうしを振り撒くために最遅。
エースバーン
持ち物:こだわりスカーフ
性格:ようき
努力値:H44 A252 B36 D4 S172
実数値:161-168-100-x-96-177
技構成:かえんボール/とびひざげり/アイアンヘッド/とんぼがえり
特性:リベロ
※キョダイマックス個体
H:16n+1
A:207-111ゴリランダーをかえんボールで高乱数1(87.5%)
B:C194ハチマキゴリランダーのフィールドグラススライダーを回復込みで高乱数2耐え(91.1%)
S:S2倍の準速80族抜き
ダイマックス時最速108族抜き
今回のびっくりポケモン。こだわりスカーフを持たせることで相手の想像よりも速く動いて有利な展開に運ぶことができる。
技構成はフシギバナを始めとするくさタイプ全般に撃つための「かえんボール」、ラプラスやポリゴンZへの最高打点で、天候に関係なく高い火力を出せる「とびひざげり」、トゲキッスへの打点で、怯みのワンチャンスも狙える「アイアンヘッド」、相手の天候ポケモンへの交代よりも後で、相手の攻撃よりも先に行動して天候を奪える「とんぼがえり」としている。「アイアンヘッド」の枠にはアシレーヌやトゲキッスへの打点となる「ダストシュート」もありかもしれないが、技が命中不安ばかりになるのを嫌った。
また、この技構成にすることで、ダイマックス時にダイスチルとダイワームによるBのバフとCのデバフをかけることができ、ほろび詰めをするときに役立つ。ダイマックス時にはダイジェットが欲しくなるが、基本的にはキングドラにダイマックスを切る構築であり、非ダイマックス時に腐る「とびはねる」は採用に至らなかった。
トノグドラと同時に出してエースバーンをダイマックスさせた場合に、ダイバーンよりもキョダイカキュウの方がよいと考えてキョダイマックス個体にしている。
ガオガエン
持ち物:バンジのみ
性格:なまいき
努力値:H244 B108 D156 S個体値0
実数値:201-135-124-100-143-58
技構成:フレアドライブ/バークアウト/すてゼリフ/ねこだまし
特性:いかく
B:A204バンギラスの砂ダメ+A-1ダイロック(130)最高乱数以外耐え
A168いのちのたまエースバーンの一致とびひざげり高乱数耐え(87.5%)
D:11n, C161リザードンのサンパワーいのちのたまダイジェット(140)最高乱数以外耐え
S:後攻すてゼリフのために最遅
サイクルを回す上で最強クラスのポケモン。
ガオガエンでエースバーンを見る構築ではないのでほのお技には「フレアドライブ」、イエブリに強くするための「バークアウト」、サイクルを回すための「すてゼリフ」を採用している。ほろびのうたで詰めるときに「まもる」も欲しいが、どの技も切ることができずに断念。
てだすけをしたフシギバナのダイアースや、ジュラルドンのダイドラグーンを耐えるために「とつげきチョッキ」も持ち物の候補としていた。しかし、物理特殊関係なくサイクル数を増やせるピンチベリーがやはり優秀だった。
最近のガオガエンはSを最速モロバレル抜き程度まで上げている個体も多いが、努力値をそれなりに割く必要がある上、先制すてゼリフをしてガオガエンのHPを温存して裏のポケモンで受けるよりも、後攻すてゼリフをして万全な状態のキングドラを盤面に置く動きが強いと考えたため最遅個体で採用した。対トリックルームでバークアウトを使ってターン数を稼ぐときにも最遅は役立つ。
選出
あくまでも選出の例。
基本選出
先発:+
後発:+or
最も多かった選出。初手からダイマックスを切るか、ダイマックスせずに殴るか、交代してモロバレルで荒らした後に後発ダイマックスとするかを考えながら立ち回る。最後にガオガエンを出した場合にはキングドラ以外パワーがないので、キングドラが通る展開を作って最後はほろびのうたで詰める。
対晴れ
先発:+
後発:+or
先発にエースバーンとキングドラを出してフシギバナに圧をかける。
相手にサマヨールやバンギラスがいる場合にはモロバレルを出し、それ以外であればガオガエンを出すことが多い。
晴れ以外であっても、とんぼがえり展開をしたいときにはこの選出をする。
対ラプラスorポリゴンZ
先発:+
後発:自由
弱気に立ち回ると負ける相手なので強気に立ち回る。相手のダイマックスを凌げばキングドラが通るときには後発にキングドラを置く。その際に後発にニョロトノも出すかは相手の構築次第で、ピンで選出することもある。
戦績
日本一決定戦本戦 最高1569 / 最終1548 44位
ランクバトル シーズン8 最高最終2012 29位
おわりに
鎧の孤島配信後から日本一決定戦予選に続き、結果を残すことができた。ベスト4が見えそうなところまで勝ち進み、負けても闇墜ちせずに50位以内には入れたのでそこそこ満足している。しかし、勝ちきれずにベスト4に入れなかった悔しさも感じる。PJCS2021の権利も獲得したので、環境を考察して自分なりの構築を作って頑張りたいと思う。